大阪、なんばのカウンセラーの学校:地震雷火事親父
TKN心理サロンブログ:【子どもと一緒に学ぶ心理学】「地震・雷・火事・親父」ってなぜ恐ろしいの? 心の仕組みを優しく解き明かそう!
「地震・雷・火事・親父」――。
皆さんも、一度はこの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは昔から日本にある諺(ことわざ)で、「この世で一番恐ろしいもの」を順番に並べた言葉として、多くの人々に親しまれてきました。
しかし、少し不思議に思いませんか?
「地震」「雷」「火事」は、どれもテレビの大きなニュースになるような、恐ろしい自然の事故や災害(さいがい)です。なのに、どうして最後に「親父(お父さん)」という人間が入っているのでしょうか。
「うちのお父さん、そんなに怖くないよ」
「たまに怒るけれど、地震や大火事と同じくらい恐ろしいかな?」
そんな風に首を傾げるお子様や、不思議に思う方も多いかもしれません。
実は、心(心理)の研究をする「心理学(しんりがく)」という眼鏡(メガネ)をかけてこの言葉を覗いてみると、これは単なる「怖いもの自慢」や「昔の自慢話」ではありません。人間が生まれてから大人になるまでに、心の中で感じる「恐ろしさ(恐怖)」や「不安」の正体を、非常に分かりやすく整理した、素晴らしい言葉だということが分かってきます。
このブログ記事では、皆さんの心を護る「TKN心理サロン」の視点から、この「地震・雷・火事・親父」という有名なフレーズを、子供探偵(たんてい)になった気分で一緒に解き明かしていきましょう!
1.そもそも「恐ろしい(恐怖)」とは何だろう?
心理学のお話に入る前に、まずは私たち人間が感じる「恐ろしい」という感情について深く考えてみましょう。
暗いお部屋に一人で入った時、遊園地のお化け屋敷に行った時、突然大きな音が響いた時、胸がドキドキして「逃げ出したい!」と思いますよね。顔が青ざめたり、手足が震えたりすることもあります。
実は、「恐ろしい」と感じる心は、皆さんの大切な心と身体を危険から護るための《スーパー防犯ブザー》なのです。
もしも人間が「火」を全く恐がらなかったら、平気で火の中に手を突っ込んで、大きな火傷をしてしまいます。「高い場所」を恐がらなかったら、高い崖(がけ)やビルの屋上から平気で飛び降りて、大変なことになってしまいます。
つまり、「恐ろしい!」と心が反応するからこそ、人は危険なものからサッと離れたり、身を隠して護ったりして、命を次の日へと繋ぐことができるのです。恐怖は、人間が生きていくために絶対に欠かせない「大切な味方」なのです。
そして、昔の人々は、その心の《防犯ブザー》が鳴る理由を、4つの異なる型(タイプ)に分類しました。それが「地震・雷・火事・親父」なのです。
【心の防犯ブザーが鳴る4つの型と心の状態】
1. 地震:足元(当たり前だと思っていた日常)が崩れる恐ろしさ
2. 雷 :驚き! 突然意図せず襲ってくる刺激の恐ろしさ
3. 火事:どんどん広がり、大切なものを全て失う悲しい恐ろしさ
4. 親父:大好きな人に嫌われる・見捨てられる関係性の恐ろしさ
この4つには、それぞれどんな心の仕組み(心理)が隠されているのでしょうか。一つひとつ詳しく見ていきましょう。
2.第一の恐ろしさ:「地震」― 当たり前が消えてしまう存在の不安
最初に登場する「地震」は、自然災害の中でも特に私たちの心を大きく揺さぶるものです。
心理学では、皆さんが毎日安心して生きていくために不可欠な心の土台のことを「安心の基地」や「存在論的安心感(そんざいろんてきあんしんかん)」と呼びます。
例えば、皆さんが毎日安心して学校に通ったり、友達とおしゃべりをしたり、お家でゲームを楽しんだりできるのは、次のような「当たり前」が無意識の中に存在するからです。
1、足元の地面は固くて、絶対に動かない。
2、住んでいる家は雨や風を防いでくれて、倒れることはない。
3、夜になったら、温かいお布団で安心して眠ることができる。
「地面は動かないのが当たり前」「家は安全な場所」という強い思い込み(これを心理学では『スキーマ』と呼びます)という土台の上で、私たちは日常を過ごしています。
ところが、大きな地震が来ると、その固かったはずの地面がグラグラと激しく揺れ、机や棚が倒れ、場合によっては家や道路が壊れてしまうこともあります。
その時、私たちの心の中ではどのような事態が起きているのでしょうか。
「えっ!? 当たり前だと思っていた地面すら信用できないの!?」
「安全だと思っていた家が、一番危険な場所に変わってしまうの!?」
という、言葉にできないほど大きな混乱(パニック)が発生します。
自分を護ってくれるはずの土台そのものが崩れ去ってしまう恐怖。自分という存在の根っこが揺さぶられる感覚を、心理学では「存在論的不安(そんざいろんてきふあん)」と表現します。
さらに、地震には「いつ来るか分からない(予測できない)」、「人間の力ではどれだけ頑張っても止められない(制御できない)」という特徴があります。
心理学の実験でも、人間は「自分ではどうしようもない危険」に晒されると、激しい無力感と強い恐怖を感じることが証明されています。地震とは、まさに「人間の力を遥かに超えた、根底からの恐怖」の象徴なのです。
3.第二の恐ろしさ:「雷」― 身体が驚く「頭と心の激しいショック」
2番目に挙がる「雷」は、地震とはまた性質の異なる「恐ろしさ」を持っています。
黒い雲が広がり、突然「ピカッ!」と眩しく光った直後に、「ゴロゴロ、ドカン!」と地響きのような大きな音が鳴り響きます。思わず耳を強く塞いで、身体をキュッと小さく丸めてしまった経験は誰にでもあるはずです。
では、なぜ雷はこれほどまでに私たちを怖がらせるのでしょうか。
① 脳の中の警報器「杏仁核(アミグダラ)」が直接鳴り響く
人間の頭(脳)の奥深くには、「杏仁核(アミグダラ)」と呼ばれる、恐怖や危険を察知するアーモンドの形をした小さな場所があります。
突然の大きな音や、目を刺すような眩しい光は、この杏仁核にダイレクトに「緊急事態発生! 危険だぞ!」という強い電気信号を送り込みます。
これは、学校で勉強して後から覚える知識的な恐怖ではありません。生まれたばかりの赤ちゃんでも、大きな音がするとビクッと身体を強張らせて泣き出します。これを「驚愕反射(きょうがくはんしゃ)」と言い、生き物が生まれつき備えている「防衛本能」なのです。
② 「何か悪いことをしたかな」という心の中の罪悪感
また、古い時代の人々は雷を見ると「神様が人間の悪事に怒っているんだ」と考えました。
現代を生きる私たちであっても、激しい雷が近くに落ちると、心の中で密かに「今日、お母さんに嘘をついちゃったからかな…」「何か悪いことをしたから罰が当たったのかな…」と不安な気持ちが芽生えることがあります。
心理学では、自分の心の中にある「正しいことをしようとする心(規範・超自我)」が刺激され、無意識のうちに抱いている小さな罪悪感と結びつくことで、恐怖が増幅されると説明されます。
つまり雷とは、「目や耳から入るダイレクトな肉体的ショック」と「心の中の反省する気持ち」が重なり合って、胸のドキドキが何倍にも膨れ上がる恐ろしさなのです。
4.第三の恐ろしさ:「火事」― 大切なものが無くなってしまう哀しみの恐怖
3番目の「火事」には、地震や雷といった自然現象とは決定的に異なる特徴があります。
それは、地震や雷が「人間の力では防げない自然の力」であるのに対して、火事の多くは「人間が注意していれば防げたかもしれないもの(人為的な災害)」だということです。
火事の本当の恐ろしさは、単に「熱い」「危ない」ということだけではありません。心理学の視点から、3つの大切なポイントに整理することができます。
① 大切な思い出が全て消えてしまう「愛着の喪失」
皆さまには、「これがないと寂しい」「ずっと大切に持っている」というお気に入りの玩具(おもちゃ)、宝物、家族で撮った思い出の写真などはありますか?
人間は、単に生きていくだけでなく、自分の周りにある物や部屋、思い出の品に自分の心を少しずつ分けて(これを心理学で『愛着・アタッチメント』と言います)生活しています。
火事は、住み慣れたお家、大切な宝物、家族の歴史が詰まった思い出の品を、ほんの短時間で真っ黒な灰に変えてしまいます。これは自分の体や心の一部を無理やり奪い取られてしまうような、極めて深い哀しみ(グリーフ)を生み出します。
② 「自分のせいかもしれない…」という激しい後悔
「あの時、コンセントのホコリを掃除していれば…」「火の元をもっとしっかり確認していれば…」という思いは、被災した人の心を深く傷つけます。「防げたはずなのに」と思うからこそ、自分を強く責めてしまう苦しみ(罪悪感やサバイバーズ・ギルト)が残るのです。
③ 周囲へ燃え広がっていく「広がりと巻き込み」
火は、自分の家だけにとどまらず、風に乗ってお隣の家や街全体へ燃え広がっていく性質を持っています。「自分のせいで大好きな近所の人たちにまで迷惑をかけてしまうかもしれない」という社会的な恐怖も、火事が持つ大きな圧迫感の理由です。
火事は、身体を焼く熱さだけでなく、「大切なものを一瞬で奪われる悲しみ」と「激しい後悔」という、心を焦がす炎の恐ろしさを意味しているのです。
5.第四の恐ろしさ:「親父」― なぜ自然災害の隣にお父さんがいるのか?
さて、いよいよこの言葉の最も面白い部分である、4番目の「親父」についてです!
「地震」「雷」「火事」という、地球規模の大災害や街を飲み込むような惨事が並んだ後に、なぜ急に、どこにでもいる普通のお父さんが登場するのでしょうか?
「昔のお父さんは、ものすごく頑固で、怒ると雷みたいに怖かったからだよ」というのも理由の一つですが、心理学ではもっと深い「親と子の心の特別な結びつき」からその理由を解明します。
① お父さんは「社会の掟(ルール)」を教えてくれる最初の壁
心理学(特に精神分析という心理学の流派)では、お父さんという存在は「社会の規範(ルール)」「駄目なものは駄目だと教える壁」の象徴であると考えられています。
お母さんが「よしよし、大丈夫だよ」と、どんなあなたも無条件で優しく包み込んでくれる(安心を与える)存在だとすると、お父さんは「これ以上やったら危険だぞ」「家から一歩外に出たらルールを守りなさい」と、人間社会で生きていくための「正しい境界線」を教える役割を担っていました。
子供にとって、その「社会のルールを体現する存在(お父さん)」に強く怒られるということは、「自分は社会から失格と言われてしまうかもしれない」「仲間外れにされてしまうかもしれない」という、生きていく上で非常に大きな恐怖だったのです。
② 「大好きで護ってくれる存在」だからこそ、怒られると一番恐ろしい!
子供にとって、お父さんやお母さんは、自分を危険から護ってくれる世界で一番頼もしいヒーローのような存在です。
もし、街で見知らぬ怖い人に「こらー!」と怒鳴られたとしても、「嫌な人だな」と思って走って逃げれば済みます。
しかし、「一番大好きな人、自分を絶対的に護ってくれるはずの人」から恐ろしい顔で怒られると、子供の心は混乱し、パニックに陥ります。
「お父さんに嫌われたら、どうしよう…」
「お家にいられなくなったら、どうしよう…」
「自分を護ってくれるヒーローがいなくなってしまう…」
このような切実な不安を、心理学では「愛着の危機(アタッチメントのきき)」と呼びます。幼い子供にとって、親から見捨てられてしまうことは、自分の命が脅かされることと同じくらい、心にとっての大事件なのです。
だからこそ、自分を脅かす恐ろしい存在として、自然災害と肩を並べるほど「親父(怒った父親)」という存在が心に深く刻まれたのです。
6.【知っておきたい豆知識】実は「親父」は、お父さんではなかった!?
ここで、ひとつ大変興味深い「言葉の歴史と秘密」をご紹介しましょう。
実は、言葉の歴史を研究する学者さんの説によると、「地震・雷・火事・親父」の「親父」は、最初はお父さんのことではなかったという説(言い伝え)があるのをご存知でしょうか。
本当は、「大風(おおやじ)」という言葉だったのではないか、と言われています。
「大風(おおやじ)」= 台風(たいふう)や、猛烈な旋風(つむじかぜ)のこと。
「地震」「雷」「火事」炭して「大風(おおやじ=台風)」。
こうやって言葉を並べてみると、全てが自然の猛威や大災害になって、綺麗に当てはまりますよね!
「大風(おおやじ)」という古い言葉が時代の変化とともに使われなくなっていく中で、人々が「おおやじ? …ああ、怒ると雷みたいに恐ろしい『親父(お父さん)』のことだな!」と勘違いをして全国に広まったのではないか、と考えられているのです。
しかし、心理学者から見ると、「たとえ言葉の言い間違いから始まったとしても、人々が『親父(父親)が一番恐ろしい』と深く納得し、この言葉が何百年もの間語り継がれてきたこと」にこそ、極めて大きな意味があります。
人間にとって「親との関係」や「家族の中での立ち位置」は、巨大な台風と同じくらい、心を大きく揺さぶる重大な関心事であるという証明になっているからです。
7.現代社会における「地震・雷・火事・親父」はどう変化した?
時代は令和となり、私たちが生きる現代社会は大きく様変わりしました。
科学技術が進んで防災の仕組みが整ったり、家族のあり方や価値観が変わったりしたことで、この4つの恐怖も少しずつその姿を変えています。
現代風に言い換えると、どのような心の恐ろしさになるでしょうか。比較してみましょう。
| 昔のことわざ | 昔の恐ろしさの象徴 | 現代の心が感じる恐ろしさ(例) |
| 地震 | 地面が揺れて家が崩壊する | スマホの不協和音(警報)に怯える/日常が一変する不確実な不安 |
| 雷 | 空からの光と爆音 | インターネット上で突然見知らぬ人から攻撃される/突然怒鳴られるショック |
| 火事 | 建物や街が燃え上がる | ネット上の「炎上」/SNSでの悪評や噂話が一気に拡散される恐怖 |
| 親父 | 頑固で厳しく怒る父親 | お父さんが優しくなった反面、「何を選択すれば正しいのか分からない」不安 |
最近では、お父さんは非常に優しくなり、休日に一緒に遊んだり友達のように仲良く話したりするご家庭が増えました。これはとても微笑ましく素晴らしいことです。
しかし、心理学的な視点から観察すると、「厳しく怒る存在」や「絶対的な社会のルールを示してくれる存在」が薄れたことで、「自分は何を基準にして生きていけば良いのだろう」「何が本当の正解なのだろう」と迷い、不安を抱えてしまうお子様(や若い世代)が増えているという新しい課題も浮かび上がっています。
目に見える恐怖が減った現代であっても、私たちは形を変えた目に見えない「不安」と戦っているのですね。
8.恐ろしい気持ち(不安)と上手に向き合うための心理学メソッド
ここまで「恐ろしさ」や「不安」の正体について一緒に勉強してきました。
最後に、皆さんが毎日の生活の中で「恐ろしい!」「不安でたまらない…」と感じた時にすぐに使える、心のトレーニング(心理学のセルフケア技術)を3つご紹介します!
① 恐ろしい気持ちに「名前」をつけて観察する(ネーミング効果)
胸がドキドキしたり、心がモヤモヤして不安に押し潰されそうな時は、心の中でその感情に優しく名前をつけてみましょう。
「あ、いま僕の心の中に『地震(グラグラ揺れる不安)』が訪れているな」
「これは突然の出来事に驚いただけの『雷』だな」
自分の気持ちを客観的(ちょっと離れた高い場所から眺めるような感覚)に観察すると、脳の警報器(杏仁核)の興奮が和らぎ、心に冷静さを取り戻すことができます。
② 「自分でコントロールできること」と「できないこと」を分ける
地震や雷、他人の機嫌を、自分の力だけで完璧にコントロールすることはできませんよね。自分ではどうにもできないことに対して「どうしよう、どうしよう」と悩み続けると、心はエネルギーを使い果たして疲弊してしまいます。
1、自分にはコントロールできないこと: お天気、地震、他人の気持ち、過ぎ去った過去
2、自分にコントロールできること: 防災用具の準備、深呼吸をすること、優しい言葉を選ぶこと、これからの自分の行動
「自分にできること」だけに意識を集中させると、心は落ち着きを取り戻し、前を向く力を取り戻せます。
③ 頼れる「安心の基地」をたくさん作っておく
お父さんやお母さん、学校の先生、塾の先生、信頼できるお友達、あるいは大好きなペットや抱き枕、お気に入りの本でも構いません。「ここに行けばホッとできる」「この人に話を聴いてもらえれば大丈夫」という場所や相手(安心の基地)を、日常の中にいくつか持っておきましょう。
たった一人で大きな恐ろしさと戦う必要はありません。苦しい時に「助けて」「話を聞いて」と声をあげることは、決して弱いことではなく、非常に勇気ある正しい行動なのです。
9.おわりに:TKN心理サロンからのメッセージ
「地震・雷・火事・親父」という古い諺は、人類が長い歴史の中で「何に怯え、それをどうやって乗り越えて生き延びてきたか」を親切に教えてくれる、心の案内図(ガイドブック)のような存在です。
何かを恐ろしいと感じたり、不安になったりすることは、決して「あなたが弱いから」でも「恥ずかしいこと」でもありません。
それは、あなたの脳と心が、あなたというかけがえのない存在を一生懸命護ろうとして正常に働いている証拠なのです。
もしも、心の中の「地震」によって気持ちがグラグラと大きく揺れてしまったり、誰かからの突然の「雷」のような言葉で傷ついてしまったり、抑えきれない不安の「火事」が広がって苦しくなった時は、いつでも「TKN心理サロン」を思い出してくださいね。
あなたの心の防犯ブザーが鳴り響いた時、一緒にその理由を一つひとつ紐解き、あなたが心から安心して笑って過ごせる場所を、私たちと一緒に作っていきましょう。
TKN心理サロンは、いつでもあなたの心の味方です。
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プロフェッショナル心理カウンセラー
金崎健二

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