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大阪難波のカウンセラーの学校:VIVANTから見る心理学

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VIVANTから見る心理学:なぜ私たちはこの物語にこれほど魅了されるのか

TBS系列で放送され社会的現象を巻き起こしたドラマ『VIVANT』。重厚なストーリー展開、豪華なキャスト陣、スケールの大きな海外ロケなど、エンターテインメントとしての魅力は多岐にわたりますが、人間の根源的な心理に働きかける要素が極めて巧みに配置されていることが爆発的なヒットの大きな要因となっています。

TKN心理サロンの視点から、心理学の理論や概念を用いて『VIVANT』の人気の秘密と登場人物たちの複雑な心理状態を深く紐解いていきます。

1. 主人公・乃木憂助に見る解離性同一性障害と二重人格の心理構造

『VIVANT』の物語を語る上で最も重要な軸となるのが、主人公である乃木憂助の内部に存在するもう一人の人格「F」の存在です。二つの人格が交錯しながら物語が進む構造は、視聴者に強いインパクトを与えました。

解離性同一性障害の形成メカニズムと心理的防衛

心理学および精神医学において、解離性同一性障害(通称DID)は、耐えがたい強いストレスや幼少期のトラウマから自分自身の精神を守るための防衛機制として生じると考えられています。人間は自責の念や強烈な恐怖に直面した際、その体験を意識から切り離す「解離」というプロセスを行います。これが極限まで進行すると、別個の人格として独立するに至ります。

表の顔である乃木憂助は、受動的で気弱、争いを避ける平凡な商社マンとして描かれています。これは社会に適応し、他者からの攻撃を免れるための防衛的な人格です。過酷な過去の記憶を意識の奥底に押し込め、無害な存在として振る舞うことで日常を平穏に生き抜こうとしています。

一方、内部に存在するFは、攻撃的で冷徹、極めて高い洞察力と危機管理能力を持つ人格です。Fは乃木が処理しきれない恐怖や怒り、そして過酷な決断を肩代わりするために生み出された保護者(プロテクター)的な役割を果たしています。

相棒としてのFが視聴者に与えるカタルシス

現代社会を生きる視聴者の多くは、日常の人間関係や仕事において何らかの抑圧や葛藤を抱えています。言いたいことを言えない、弱さを隠して生きているといった感覚です。

視聴者は、気弱で頼りない乃木に自分自身の弱さを重ね合わせ、共感します。しかし同時に、危機的状況になると影から頼れる相棒としてFが現れ、圧倒的な能力で敵を圧倒し、問題を解決していきます。この構図が視聴者に強烈なカタルシス(情緒的浄化)をもたらします。

自分自身の内側にある「守られたい」という欲求と「強くなってすべてを解決したい」という相反する欲求の双方が、乃木とFの対話によって満たされるため、視聴者は強い心理的満足感を得るのです。

2. 幼少期のトラウマと愛着理論(アタッチメント)の深層

乃木憂助という人物の行動原理の根底には、幼少期における過酷な体験と、両親に対する切っても切れない情念が存在します。この動機を理解する上で重要なのが、心理学者ジョン・ボウルビィが提唱した愛着理論です。

安全基地の喪失と自己肯定感の欠如

愛着理論において、幼少期に養育者との間に形成される信頼関係は、人間が世界を安全な場所として認識するための「安全基地」となります。子どもは安全基地があるからこそ、外界へ挑戦し、他者を信頼し、自己肯定感を育むことができます。

しかし乃木は幼少期に無慈悲な形で両親と引き裂かれ、凄惨な環境で孤児として過ごしました。この安全基地の即座かつ決定的な喪失は、彼の精神に「自分は捨てられた存在なのではないか」「自分には価値がないのではないか」という根深い自己否定感と深い孤立感を植え付けました。

アメリカで救出され教育を受けた後も、彼の心の中心には常に「本当の自分は何者なのか」「なぜ愛されなかったのか」という問いが居座り続けていたと考えられます。

別班への忠誠と父ノゴーン・ベキへの愛憎

乃木が自衛隊の影の組織である「別班」に所属し、命を懸けて日本を守ろうとする行動には、心理学的な理由が存在します。国家を守るという大きな大義名分を得ることで、自分を必要としてくれる居場所、すなわち失われた安全基地の代替を獲得しようとしているのです。自分が必要とされる人間であることを証明するための自己承認の手段でもあります。

物語の中盤、国際テロ組織「テント」のリーダーとなった父ノゴーン・ベキとの再会は、乃木の愛着問題のクライマックスを意味します。父に対する復讐心や正義感と同時に、幼少期に得られなかった親からの愛や承認を得たいという強い欲求が交錯します。

父に銃を向けるシーンや、父の意図を察しながら行動する姿には、倫理や正義を超えた「親子の絆の再確認」という人間心理の極限状態が描き出されています。人は誰しもルーツを求め、親からの愛を求めるという抗えない本能を持っており、この描写が視聴者の胸を強く打つのです。

3. 信頼と裏切りが生む認知の不協和と脳内快感

『VIVANT』の物語構造は、視聴者の予測や期待を次々と裏切る仕掛けに満ちています。この裏切りと展開の予測不能性が、心理学的な引き込み効果を生み出しています。

認知の不協和とその解消プロセス

心理学において、人が自分の持っている認識や予測と矛盾する新たな事実に直面した際、心に強い違和感や不快感を覚える現象を「認知の不協和」と呼びます。人はこの不協和を解消するために、理由を探したり認識を修正したりしようと激しく思考を巡らせます。

劇中において、主人公の乃木は長らく気弱で無能な商社マンとして描かれますが、物語の中盤で実は冷徹な「別班」の工作員であることが明かされます。さらに、仲間であるはずの他の別班員を躊躇なく銃撃するなど、視聴者の倫理観や事前予測を大きく揺るがす出来事が連続します。

視聴者は「なぜ乃木は仲間の別班を撃ったのか」「彼は本当に裏切ったのか、それとも別の目的があるのか」という強い不協和状態に陥ります。この状態になると、疑問を解決したいという衝動からドラマから目を離せなくなり、次回への期待感が極限まで高まります。

情報のゲシュタルトとドパミン分泌

散りばめられた伏線や一見支離滅裂に見える行動が、ある瞬間に一つの筋道として繋がった時、心理学でいう「ゲシュタルトの形成」が起こります。個々のバラバラな情報が美しい全体像として立ち現れる瞬間です。

この不協和の解消とゲシュタルト形成が同時に起こる時、人間の脳内では報酬系物質であるドパミンが大量に分泌されます。これがいわゆる「アハ体験」であり、強力な快感をもたらします。視聴者は物語を追うことでこの心理的快感を繰り返し体験し、作品への没入度を深めていったのです。

4. なぜ『VIVANT』は社会現象となったのか:心理学的分析

単なる面白さを超えて、社会全体を巻き込むムーブメントとなった背景には、視聴者同士のコミュニケーションや自己表現を促す心理的なメカニズムが存在します。

集団心理と考察ブーム(社会的証明と承認欲求)

近年の映像作品において重要な要素となっているのが「考察」です。『VIVANT』はあえて説明を削ぎ落とし、細かな小道具や視線、発言に伏線を仕込むことで、視聴者が考察できる余白を大量に用意しました。

心理学における「社会的証明の原理」によれば、人は多くの他者が関心を寄せているものに対して価値を感じ、自分も参加したいという衝動を覚えます。SNS上で多くの人々が分析や考察を投稿している状態が、さらに新しい視聴者を呼び込む引き金となりました。

また、自らの独自の考察をSNSに投稿し、それが当たったり他者から高い評価を受けたりすることで、個人の承認欲求や「自分は真実を見抜く能力がある」という自己有効感が高まります。作品を見るという受動的な行為が、謎を解くという能動的なゲームへと変換されたことが、熱狂的なファン層を急速に拡大させました。

シャドウの投影とペルソナの解放

心理学者カール・ユングは、人が社会生活を送る上で表面上見せている仮面を「ペルソナ」、自分の中で抑圧し隠している無意識の側面を「シャドウ(影)」と呼びました。

一般的に人間は、社会のルールや他者との調和を守るため、従順で真面目なペルソナを被って生活しています。しかし、その裏側には攻撃性や破壊欲求、圧倒的な力を持ちたいという抑圧されたシャドウが必ず存在します。

乃木憂助というキャラクターは、まさにこのペルソナとシャドウを極端な形で体現しています。普段は無害なサラリーマン(ペルソナ)として振る舞いながら、裏では法をも超える圧倒的な力と知略で敵を排除する国家の影(シャドウ)として活動します。

視聴者は乃木の姿に自分自身の抑圧されたシャドウを投影します。現実には解禁できない強い自分、法やルールに縛られずに正義を果たす自分を乃木の中に重ね合わせることで、代償的な欲求充足と爽快感を得ているのです。

緊張と緩和の理論(ストレスと解毒のサイクル)

物語の構成には、徹底的な緊張状態と時折訪れる緩和状態が巧みに交互に配置されています。バルカ共和国での過酷な逃亡劇や、いつ命を落とすかわからない密室での駆け引きは、視聴者に強い心理的ストレス(緊張)を与えます。

しかし、その合間に挟まれる赤飯の描写、日本食への愛着、あるいは野崎とのコミカルなやり取りや薫との純粋な恋愛描写が、一転して心理的な安全性(緩和)をもたらします。

心理学において、人間は持続的なストレス状態よりも、緊張から解放される瞬間に最も強い感情の揺れや幸福感を感じることが分かっています。この緊張と緩和の振れ幅が大きければ大きいほど、視聴者の感情は揺さぶられ、物語への記憶が強く焼き付けられることになります。

5. 人間心理の深淵を描いたエンターテインメント

『VIVANT』という作品がこれほどまでに広範囲の人々の心を掴んで放さなかったのは、単にスケールが大きいアクションドラマだったからではありません。その本質は、極限状態におかれた人間の内面世界と心理メカニズムを緻密に描き出した人間ドラマであった点にあります。

トラウマが生み出す多重人格という防衛機制、生きる根底を支える愛着理論、予測不能な展開が引き起こす認知の不協和、そして視聴者自身の抑圧された感情の投影や承認欲求の刺激。あらゆる角度から人間の心理プロセスに訴えかける計算し尽くされた構造がそこにありました。

私たちは乃木憂助という男の葛藤と成長を通して、自分自身の内側にある弱さと強さ、愛されたいという本能、そして居場所を求める切実な欲求を再確認していたのかもしれません。作品の裏側にあるこれらの心理学的要素を深く知ることで、『VIVANT』という物語が持つ真の深みとメッセージ性がより一層鮮明に浮かび上がってきます。

心理学は、いろんな角度から学ぶことができます。ドラマを見るだけでも、心理的な要因が学べます。
カウンセラー養成講座では、そんな話をしながら講座を進め、プロフェッショナル心理カウンセラーの育成を行っています。

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